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昭和・大正時代のそうめんレシピ

しづやしづ しづのをだまき 繰りかへし 昔を今に なすよしもがな

彩りよく染めた糸で織りなした日本古来の倭文<しづ>織物に、自らの名を引っかけて静御前が詠んだと伝えられるこの歌には、「しづのをだまき」という言葉が登場します。
「をだまき」は漢字で記すと「苧環」または「緒環」で、麻や苧麻<カラムシ>の糸を中空の玉状に巻いたものを意味します。
歌舞伎の『妹背山婦女庭訓』で、奈良は三輪山のふもとに暮らす娘お三輪が手にする小道具として、目にしたことのある人もいるかもしれません。
お三輪の持つ苧環は、もともと乞巧奠<きっこうでん>つまり現代でいう七夕祭のために用意されており、物語の中では愛しい人との変わらぬ仲を願って使われます。
現代では、うどんの入った小田巻蒸しやオダマキというキンポウゲ科の花など、いくつかの呼称の由来にもなっている、「をだまき」。
池利にも、冒頭にあげた「しづのをだまき」にちなんで名付けられた、「しづの緒環」という商品が存在します。
実は「緒環」は、三輪そうめんの細さを示す呼称のひとつでもあり、10gあたり120本以上のものが「神杉<かみすぎ>」、95〜105本で「緒環<おだまき>」、80〜95本は「瑞垣<みずがき>」、70〜80本が「誉<ほまれ>」です。
「しづの緒環」も細さは緒環で、なおかつ製造から1年以上寝かせた、上質な涸物 <ひね>の商品です。
1年未満の新物よりコシがありますから、つゆにつけて味わうだけでなく、さまざまなバリエーションで楽しむことができます。

素麺アレンジ

[出典:123RF.com]

このとき、「そうめん レシピ」あるいは「そうめん アレンジ」などのキーワードで検索エンジンを検索すると、数多くのレシピが手に入ります。
こうしたものを利用するのも一案ですが、たまには趣向を変えて、昭和・大正時代のレシピを試してみませんか。
たとえば、国立国会図書館デジタルコレクション詳細検索で、キーワードに「素麺」、NDC分類に「596」と入力して検索してみてください。
分類596は、「食品. 料理」を意味します。素麺は仮名ではなく漢字です。
一例として、『折原式日本料理独学』という大正9年発行の書籍で、「目次:素麺寿司」の右にある矢印をクリックすると、「素麺一把を・・・」から始まる素麺寿司の作り方を参照できます。
また、大正14年の『手軽で美味い四季の惣菜料理』には、「素麺の料理五種」が掲載されています。
冷やし素麺で「辛子入り割り醤油」「胡麻醤油」「酢味噌」というつゆのバリエーション、そして「集め素麺」、「鯛麺」で5種類です。
かたやキーワードに仮名で「そうめん」、NDC分類に「596」と入力して検索すると、今度は『お通し料理百珍』という昭和7年発行の書籍がヒットします。
上記同様に矢印をクリックすると、「野菜そうめん」の拵え方が書かれています。
あるいは、最初に分類番号を使わない方法もあります。
まず、キーワードに「素麺」とだけ入力して検索します。検索結果の一覧が表示された状態で、左側のリストでNDC分類の「5類 技術」をクリックします。
これで、分類番号を指定する場合と、ほぼ同様の結果を得ることができます。
もう少し範囲を拡げて、キーワードに「麺」だけを指定して検索し、「5類 技術」→「59 家政学. 生活科学」→「596 食品. 料理」と分類を狭くしていく方法もあります。
直接的にそうめんを検索したわけではないですが、たとえば昭和14年に 主婦之友社から出版されている『お惣菜料理』の「麺類の美味しい食べ方」に、豆腐を合わせた冷やし素麺のバリエーションが載っています。
そのすぐ次に出てくる「變り冷やしうどん」も、そのまま素麺にアレンジ可能でしょう。
そうめんという日本の伝統食品を調理するにあたり、こうして昔のレシピを試してみるのも、楽しいものですよ。

小鉢と素麺

[出典:123RF.com]


なお、国立国会図書館デジタルコレクションを使ってインターネット上で内容を参照できるのは、「インターネット公開」資料に限られます。
「図書館送信資料」の表示のあるものは、インターネットでは公開されていません。
絶版等で入手困難な資料に相当し、図書館向けのデジタル化資料送信サービスに参加している図書館にて閲覧可能です(→参加館)。
「国立国会図書館内限定」資料は、館内での閲覧のみになります。
ここでは誰でも自宅にいながらにして昔のレシピを手に入れる方法の例をあげましたが、地元の公共図書館で分類番号と年代を指定して検索すれば、印刷版の本を借りることも可能です。
ぜひ、「しづの緒環」で、いろいろな昔の味を再現してみてください。
この記事を書いた人
葉月しおん
特許をはじめとする知的所有権に関する調査、記事執筆、翻訳を手がける。
月刊誌の連載や特集の執筆経験も豊富で、徹底した調査が求められる専門性の高い内容から軽いコラムまで、幅広く対応。既存の製品に、新たな使い道を生み出すことを、特に得意とする。
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