手延べそうめんと機械麺との違いは?
手延べそうめんと機械麺との違い~池利での製造法紹介~
手延べそうめんの定義
手延べそうめんは、乾麺の一種です。細く乾燥された麺をお湯で茹でることで、柔らかくなり、食べることができます。※半生タイプや生麺タイプの手延べそうめんもありますが、あまり数は多くありません。
ちなみに、手延べそうめんは、乾麺の中でも「手延べ干しめん」に分類されます。乾麺と言えば、そばやうどんを思い浮かべる方もいると思いますが、それぞれの違いはご存じですか?
乾麺は、以下のように直径の値によって分類されています。
乾麺の分類
手延べうどん (直径1.7mm以上)
手延べ干しめん 手延べひやむぎ(直径1.3mm~直径1.7mm未満の丸棒状)
手延べそうめん(直径1.3mm未満の丸棒状)
乾麺 干しそば
干しうどん (長径1.7mm以上)
干しひらめん(幅4.5mm以上・厚さ2.0mm未満)
干しめん 干しひやむぎ(長径1.3~1.7mm)
干しそうめん(長径1.3mm未満)
『手延べ干しめん』は、JASの定義で『小麦粉に食塩及び水を加えて練り合わせた後、食用植物油又はでん粉を塗付してよりをかけながら順次引き伸ばして丸棒状又は帯状の麺とし、乾燥したものであって、製麺の工程において熟成が行われているもの』とされています。(乾めん類品質表示基準 最終改正 平成16年6月18日農林水産省告示第1192号参照)
乾麺は、通常のものと手延べで作られたものに分かれ、さらに太さが細い物が「干しめん」や「手延べ干しめん」と呼ばれます。
つまり手延べそうめんは、乾麺の中でも、小麦粉と食塩や水を加えて練り合わせ、食用植物油、又はでんぷんを塗布し、引き延ばされ、製造の工程で熟成が行われた「手延べ干しめん」のうち、麺の直径が1.3mm以下の商品を指します。
又、「手延べ」がつかない「干しめん」というものがあります。読んで字のごとく、手延べで作られたか作られていないかの違いなのです。具体的にどんな違いがあるのでしょうか?下記で詳しく解説します。
手延べそうめんと機械麺の違い
手延べではない麺は、機械麺と呼ばれています。手延べそうめんは手作業によって作られたそうめんで、手延べでないものは機械によって作られたそうめんということです。その違いは作り方だけでなく、味や食べた時の食感も異なります。
では、材料、製造方法、味・食感それぞれの違いを比較していきましょう。
手延べそうめんの特長
手延べそうめんの材料は、小麦粉と塩、水、植物油です。小麦と塩、水を混ぜ合わせた生地に植物油を塗り、一定の太さに切り出します。その後、生地に縒り(ねじりを加える)をかけて、2本の棒に8の字になるように麺を巻き付けます。その後、人の手によって、引き延ばされて、乾燥。乾燥が終わったら決められた長さに裁断され、よく見慣れた形のそうめんになります。製造に時間がかかるため、製造工程の中で麺が熟成され、美味しい手延べそうめんへと仕上がります。加えて、細く引き伸ばすことで、小麦粉に含まれている「グルテン組織」が、麺の中央に形成されます。グルテン組織ができることで、機械麺に比べてコシが向上。又、麺を引き延ばすため、切った時の断面が丸くなり、のど越しも段違いです。
手延べそうめんは、3~4万倍生地を伸ばして作られます。手延べそうめんは、細ければ細いほど、製造が難しくなるため、作ることができる職人は限られ、生産量が多くありません。そのため、その価値は高く、高級品で、贈物として人気が高いです。
【機械麺】
機械麺の材料は、小麦と塩、水です。手延べそうめんとは違い、植物油は使いません。材料を混ぜ合わせて、塊にした生地にローラーなどで圧をかけ薄く延ばし、細く切っていきます。そして、細く切ったものを乾燥させたのが、機械麺です。手延べそうめんのように長く伸ばさないため、麺の中心にグルテンの組織ができにくく、コシが弱くなり、味、食感に違いが生じます。
手延べそうめんと機械麺には、上記のような違いがあります。見分ける時は、パッケージに「手延べ」かどうかが書いてあるかどうか、又「手延べ風」や「準手延べ」などの記載が無いかを確認しましょう。最初に述べた通り、乾麺は、製造法や太さが厳密に決められており、該当しているものを名乗らなければならないのです。
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製造方法
原料は、充分吟味に吟味を重ねた良質の小麦粉を用いています。製造に2日かけ、充分グルテン(弾力性、ねばりけ)を引き出し、その最高の状態をうまく利用して仕上げるという技術を用いて作られてきました。古来より、良質な小麦と手間暇かける伝統の技術によって作り続けられ、強いコシと口当たりの良さ、歯ごたえの良さがあるのが、手延べ三輪そうめんの特長です。 製法は当日の早朝から気温、湿度、天候を考え食塩水を作り(毎日割合が加減されます)、小麦粉と練り合わせ、適当な柔らかさの団子を作ります【コネと呼ぶ】。
この団子を手首くらいの麺線(太い縄状)に仕上げ、別の桶(サイト桶)に渦巻状「の」の字型に食用植物油を塗りながら巻き込み【油がえしと呼ぶ】、風の入らないように覆いをして熟成させます。
当社ではそうめん作りにおいてこの工程に麺のコシの秘訣があると考え、昔ながらの工程をさらに飛躍させ、9回の圧延と4回の熟成時間をとり、麺のコシのもとである、グルテン形成に非常に気を使っています。
次に細め機にかけられ、直径1.5cmくらいのロールに巻きかえ【ほそめと呼ぶ】、前の工程の「サイト桶」に巻きこんだ要領で、再び細くなった(親指大の太さ)麺線に巻き替えます。 その後、「うまし」と呼ばれる熟成時間をとり、さらに前項の要領で0.5cmくらいのロールにかけ【小よりと呼ぶ】、小指くらいの麺線にし、再度「うまし」を行います。
ここでも当社は、麺を細めていくにあたり、「ほそめ」1回、「小より」2回の計3回に分けて細めていきます。これは、麺内に出来ているグルテンにできるだけ負担をかけず延ばすことにより、麺のコシをさらに良いものとするためです。
その後、掛巻機というもので、直径7mm、長さ55cmの管2本に8の字型にそうめんを引き掛けます【カケバと呼ぶ】。
その後、次の工程に移るまでに大きく熟成時間を取ります。数回にも分け熟成時間を取っていますが、麺への負担は大きなものになっているため、一旦休憩させるのです。 長時間の熟成の後、1本1本30cmくらいの長さに引き伸ばし【小引きと呼ぶ】、ねかし風呂と呼ばれる熟成庫に入れ、熟成「うまし」を行います。
次に麺を延ばし【かどぼしと呼ぶ】乾燥を行います。長さ30cmくらいの管に掛かったそうめんを徐々に乾燥度合いを見て最終2.3mくらいにまで引き伸ばし、箸で分け、完全に乾燥するまで放置します。
乾燥が出来あがったものから定寸の寸法に裁断します(全国統一の19cm)。裁断したそうめんを50gに結束して出来上がりです。
「厄」「古品」について(豆知識)
「厄」「古品」について(豆知識)
手延べそうめんには、「厄」と呼ばれる現象があるのはご存じですか?厄とは、簡単に言うと、「貯蔵すると食感が変わる」という現象です。
手延べそうめんは、昔から一定期間貯蔵すると美味しくなると言われていました。具体的には、寝かせておくと、よりコシが出て、歯切れがよくなります。加えてのびにくくなることで、多くの人から好まれていたのです。そのため、手延べそうめんは古くから、冬に製麺し、厄が済んでコシと食感が良くなってから夏に売り出す、という方式を取っていました。
この現象は、梅雨の高温多湿な気候を超えることで起こります。梅雨時期は、そうめんが保管されている倉庫の中は、高温多湿の状態。この状態の中にそうめんを貯蔵しておくと、そうめんが発酵し、厄が起こって食感が変わるというわけです。
ちなみに、厄を行うのはそうめんなどの細い麺類のみで、うどんやそばでは厄は行いません。これは、うどんはもちもち感と粘り、そばは風味が求められるためです。厄をすると、逆にシャキシャキとした食感になって、もちもち感が落ちるだけでなく、風味も落ちます。そのため、うどんやそばは厄を行わず、打ち立てが良いとされているのです。
そうめんには、「古品」と呼ばれるそうめんもあります。「ひねもの」と読み、「涸物」や「古物」と書かれることも。
古品とは、2回梅雨を越したそうめんを指します。又、梅雨を3回越したそうめんは「古古品(こひねもの)」と呼ばれ、「大古物(おおひねもの)」と書く場合もあります。上記で、厄という食感が変わる現象が起こるとお話しましたが、それらを1回、2回と経験させたそうめんです。数回厄を経験させることで、より熟成され、コシが強くなり、のびにくくなります。
とはいっても、寝かせれば寝かせるだけよいというわけではなく、一番おいしく食べられる頃合いは、3年程度寝かせたそうめんだそうです。
涸品(ひねもの)手延べ三輪そうめん 山辺の道
「名人」と呼ばれる職人により細く手延べされた三輪そうめんを熟成庫で一年以上寝かせることで、特筆に値するコシと風味が生まれました。ゆで太りせず歯ざわりの良さも特徴です。特別な職人が作る希少な三輪そうめんを熟成庫で1年寝かせた極細三輪そうめん。大切な方への贈り物に。 |
今回は手延べそうめんと機械麺との違いについてのご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
当社では手延べうどんも販売しております。下記記事では手延べうどんと手打ちうどんの違いについてもご紹介していますので、併せてご覧ください。